新しい絵の会の機関誌
「美術の教室」


67号表紙


B5版 100ページ

カラー2ページ、図版多数

年2回 4月、11月発行

購読料 2,000円(年2冊)

郵送料 480円(2冊)

絵の会の総力をあげて編集している美術の教室。本誌があれば、美術教育の今日的課題や実践が読者の手元にとどけられます。




目次

とびらのことば




美術の教室67目次


口絵より


とぴらのことば …………………………………………編集部 ……5
●特集 子どもは何を表現したか
○「子どもが描いた今」を見て感じたこと …………………………遠山由美子(神奈川) ……6
○作品展「子どもが描いた今」を鑑賞して ………………………………菅野雅人(山ロ) ……7
○愛らしい歌・優しい心―まなみちゃんのサクラ― …………………………小島八重子(神奈川) ……9
○5年生、及川君の描いた風景 ………………………………坂本芳江(福島) ……10
○私の読みとり ……………………………中川美恵子(愛知) ……11
○感想 ………………………………蒲田依子(東京) ……15
○うれしくなってしまう絵たち ……………………………大多アキ子(東京) ……16
○「川崎絵の会」3〜5才児をみて ……………………………保坂三枝子(埼玉) ……17
○子どもの絵をみて ………………………………田中里佳(東京) ……18
○作品を見ながら3人の対話 …………………………秩父はんの会(埼玉) ……19
○感想 ……………………………山口由紀子(兵庫) ……21
○心の体温の行方 ……………………高橋直裕(世田谷美術館) ……22
○「子どもたちの描いた今」展をみて ……………………箕田源二郎 藤野まゆみ ……24
■全国研究集会理論講座
○生活勉強・総合学習と美術の表現 ………………………………小菅盛平(東京) ……30
○セタピはアソピ?!−子どもと作る美術館− ………………………………………高橋直裕 ……36
○古代仏教彫刻における人間的なものの表現 ……………………………………藤野まゆみ ……38
■全国研究集会記念講演
表現とは何だろう ……………………………作曲家池辺晋一郎 ……45
■実践記録
○乳児期の描画・造形活動の大切さ ………………………………脇志津子(京都) ……58
O描きながら意欲を高めて―森で遊ぽう4年生― ……………平林美津枝 高山眞紀子(干葉) ……65
■論文
○新津論文「先生、ぽくの絵を見て」を読んで ……………………………岡島健太郎(東京) ……72
○この先、中学校の美術教育はどうなるの ……………………………三鴫眞人(神奈川) ……78
■連載
絵手紙はたのし ………………………………三輪嘉昭(愛知) ……81
■新刊紹介
「子どもの美術と歩む」深町修司著 ………………………………君島主一(福島) ……85
事務局通信あとがき ………………………………………………… ……87

○表紙の絵「うたっているとき」新宿区愛日小学校5年 指導 横山裕



とびらのことば

子どもは何を表現したか (中谷隆夫)

第40回新しい絵の会全国集会会場の工芸高校のロビーで「子どもたちの今」展が開かれた。北海道から熊本まで、全国の子どもたちの作品が並べられた。
 私たちは子どもの作品は乳幼児や障害児も含め、すべての子どもの人格をあらわしているものとして大切にしてきた。作品には一人ひとりの子どもの喜びや悲しみ、願いや悩み、成長の成果やつまづきなどすべてがこめられている。
 むかし、“良い絵、悪い絵”という本があった。今でも良い絵とはとの質間を耳にする。もとより悪い絵などない。たとえ図式的な絵、概念的といわれる絵の中にも子どもの思いがこめられている。マンガチックな表現の中でも子どもたちは自分の
思いを表現している。5分といわず、じっと子どもの絵を見ていると子どもの顔が見えてくる。
 障害児に人格があるのかとの都知事の発言に識者の批判がよせられている。彼は居直った発言をしているが、もし彼が障害児の作品を見たら、そこから何を読みとろうとするだろうか。
 子どもの絵をどれほど深く読みとれるか、子どもの絵とどれほど対話できるかは、子ども自身とどれほど対話ができるか、ということでもある。
 文部省は初めて「学級崩壊」の実態にふれて分析をした。平均三つ以上の要素がからみあっており、その三割はべテラン教師をしてその能力を超えた状況にあることを明らかにした。
 私たちは「子どもの思考力の衰退」を危倶し、その根底に生活に根ざした「想像力」の欠如をあげてきた。
 美術の表現は生活の経験やものとのかかわりを形象化することにより再体験し、より豊かに認識するいとなみである。子どもたちは色や形に置きかえることにより、ものごとや自然や人間が見えてくる。
 ものごとや自然と形象を通して対話する力は人間発達に欠かせない基本的な能力の一つである。
 文部省の教育課程では「造形あそび」だけでなく、一貫して美術の表現の積極的な役割を軽視あるいは無視してきた。
開隆堂の新しい教科書から生活の経験などを表現したものが姿を消した。日文は積極的に載せる努力をしており、新しい絵の会の仲間の実践した作品も何点か載せている。しかし、残念なことだが子どもの絵を”教育的な配慮”で修正加筆があった。そのことについては「子どもの人格を無視し人権を破壊する行為と深く反省している」旨のコメントがあった。子どもの作品が「かけがえのない一人の成長過程にある子どもの精一杯の表現」であることを真から理解してほしい。
 「子どもたちの今」展に並べられた作品は「造形あそび」に席捲された教育課程や子どもを取りまく困難な状況の中で、仲間たちの教育実践の成果を示していると同時に私たちに実践の一層の多様性を求めている。
 まず子どもの作品と深く対話しよう、そこから美術教育のあり方も見えてくるだろう。

戻る

Home

inserted by FC2 system