新しい絵の会の機関誌
「美術の教室」


81号表紙


B5版 80ページ

カラー2ページ、図版多数、付録CD-ROMつき

年2回 5月、11月発行

購読料 2,000円(年2冊)

郵送料 160円(2冊)

絵の会の総力をあげて編集している美術の教室。本誌があれば、美術教育の今日的課題や実践が読者の手元にとどけられます。





美術の教室82  2007年5月 新しい絵の会編集

目次

とびらのことば




美術の教室82
目次

        

82号の特集

◎見つめて描く

とぴらのことば ………………………………杉本雅士(編集委員長) ……5
■巻頭論文
表現者を育てる「描写」の復権を
−見てかく絵の重要性−
………………………………・中谷隆夫(常任委員)) ……6
■中谷論文によせて
*見るということ 描くという事
……………………………………岡島健太郎(画家) ……12

*見て描くことの大切さ

…………………松浦龍子(座間市・やなせ幼稚園) ……15
*「見てかく」仕事を通して学ぶこと ………大平陽代(埼玉県越谷市立大袋北小学校)) ……17
*「かかわり」を通して育まれる人への理解 …………………‥‥‥‥‥向井 進(埼玉絵の会) ……19
■特集「見つめて描く」実践報告
*見て発見したことを描く …………………矢野和江(常任委員・宮内幼稚園) ……21
*見ているものが見えるように
  体を使って見る
……今関信子(綾瀬絵の会・綾瀬市立天台小学校) ……27
*12歳の自分を見つめる「12歳の自画像」ありのままの自分を優しく受け入れて ……………………………………………渡邊智恵子
(船橋美術サークルでくの会・船橋市前原小学校)
……34

*「見つめる」とらえ方から「キュビスティック」なとらえ方へ

…………香取喜剛(千葉県香取市立佐原中学校) ……40
*ものとかかわることは生きること
        自分の世界をひろげること
…………………江渡信子(町田市立七国山小学校) ……46
■実技講座
*わたくし流「絵の具入門」2 うちあげ花火 …………………………小菅盛平(和光鶴川小学校) ……52
*「楽しい楽器作り」
         −空き缶を使った鉄琴の作り方−
…………………………………足立晃一郎(兵庫県) ……56
*作って遊んでつながる  わたくし流「紙工作入門」その(1)
    紙がおもちゃに大変身
……服部 宏(大阪・八尾市立曙川東小学校兵庫県) ……59
■新美術館訪問   
大川美術館  〜逢いたいときに いつでも逢える 名画の館〜 …………………………………江渡英之(和光大学) ……65
■実践報告

*「普通の子ども」のつぶやきや叫びに、心をよせて
        平和と人権の美術教育‥・

……………………薮内 好(新しい絵の会・研究部) ……69
■読者のページ ……………………………………………編集委員会 ……76
■教育基本法反対声明 ………………………………………………………… ……78
■全国大会案内 ………………………………………………………… ……79
■付録CD ………………………………………………………… ……83
■事務局通信

表紙の絵 ○「夏みかん」 小学4年
裏表紙の絵 ○「夢は音楽を楽しむ生活」 小学6年
○「タンポポ」紙工作 服部 宏
カット 杉本雅士


とびらのことば

「見つめて描く」とは

杉本雅士(美術の教室.編集委員長)

 「見て描く」と言ったときに、子ども達は、そして多くの大人たちは何を思うのでしょう。対象を如何に上手く再現するかを求めたり、求められていると思ってしまうのかもしれません。
 本書75号では、「描くことからはじめよう」と題して、スケッチの大切さを特集しました。そこでは、スケッチを美術という狭い枠で捉えるのではなく、手を使いイメージすることは、人間の発達に必要な条件であるとして、他教科や活動に広げて展開しました。本号は、あらためて美術教育という枠組みの中で、「見て描く」という仕事がどういう意味を持つのかを考えようとしたものであり、今日の子ども達のおかれている状況や、図工・美術の授業の有り様を見た時に、もっと大切に扱われていいし、その必要性は増しているとの思いから組まれたものです。
 詳しくは、論文や実践報告を見ていただきたいと思いますが、そのいずれにも共通していることは、「見て描く」仕事を、「見たことを描く」という単純な方向性で捉えていないと言うことです。
 描くという行為によって、漠然と見ている事物がはっきりと見えてくる。それが表現を高めることになり、その高まりが対象への見方をより深める事につながる。つまり、対象と自分の表現を行きつ戻りつする制作の過程にこそ、認識の高まりや感受性の広がり、あるいは思考の深まりが期待できることに価値を求めている点だと思います。特集の表題を「見つめて描く」としたことには、「見る」ということの深まりに重きを置く思いも込められています。
  けして、表面的な再現を求めたり、そのための画一的な描き方を教えたりすることではないということです。しかし、冒頭で述べたように、「見て描く」仕事には、再現性や描写力、あるいは上手い下手といった意識や事柄がつきまといますから難しく、またデリケートな仕事でもあります かといって、ひとり一人の見方、感じ方が違うのだからと、見方も、描き方も支援をしないで、対象に迫る事をさせなければ、見ることの深まりも望めないし、描くことの意味をも失ってしまいます。
 バーチャルな世界に囲まれ、待ってくれない、あふれる情報に翻弄されている子ども達。実体験が細っている子ども達だからこそ、立ち止まってじっくりと、自分を取り巻く自然や家族、友人や生活に目を向け、向かい合い、思いをよせる機会が用意される必要があります。「見て描く」仕事は、その機会として、大きな意味を持つものだと思うのです。

2007年5月

美術の教室82


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